強要



「先輩のやってる所見せて?」
 クスクスと笑いながら雪夫が言った。後ろから抱き締められ耳の後ろを舐め上げられると、ぞくりと背筋を熱い何かが這い上る。
「そんなの…出来ない」
 服の上から胸をまさぐってくる雪の白い指が、俺の乳首を探り当てる。爪先でくりくりとそこを押しつぶしながら雪は笑う。そこが弱いのを知っていてワザとやっているんだ。
 わかっていてもその指を振り払う事が出来なかった。俺は雪夫の手首を掴んだまま、唇を噛んで声を上げないようにするのだけで必死だった。
「国彦先輩が自分でやってるの見たいな?」
 耳に注ぎ込まれる雪の意地悪な声。こいつは何時も俺がイヤがるのを知っていてわざとに先輩と呼ぶ。こんな時だけ…
 恥ずかし気もなく俺のペニスは雪夫の声にムクリと頭を擡げる。雪夫はそれを確認すると抱き締めていた手を離し俺をベットの上に優しく突き飛ばした。足元に膝をつき俺のズボンに手をかけ一気に下着ごと引き下ろされる。
 熱くなった股間が雪夫の眼前に晒されると一気に体温が上昇し顔が火照る。
「先輩ってばやらしい。もうこんなになってるんだ」
 俺を煽るように雪夫がクスクスと笑う。そんな雪の趣向にわかっているのに俺自身は更に重量を増し、雪夫の愛撫を待ち望みビクビクと脈打っている。
「先輩って…呼ぶなってば……」
 抗議の声が欲情に濡れる。身体の奥から熱い疼きが込み上げてくる。顔が火照って熱い。
 雪夫が内腿に手をかけぐいっと膝を開き、先走りで濡れる俺のペニスをマジマジと覗きこむ。その視線が俺の身を更に焦がし、知らずその愛撫を誘うように腰が持ち上がる。
「ねえ…このままにして置いて上げようか?」
 雪夫が俺のペニスに息を吹きかけ残酷に囁く。俺ははっと息を飲み雪夫の顔を見つめた。
 楽しそうにクスクスと笑い雪夫は俺の身体から身を引いた。
「やって見せてくれなきゃこのままですよ」
 メガネの奥に光る雪夫の瞳が揺れる。こうして俺が恥ずかしがる事ばかり望む…雪夫は酷い恋人だ。
 俺は観念してギュッと目を閉じると自分の股間に指を滑らせた。


「ん…ふぅ…」
 噛み締めた唇から漏れる吐息を必死で堪える。涙と汗が混じり頬を伝っていく。
 自慰行為をしたことがないわけではない。だがそれをこうして見られていると言う事実は俺をいつもより高みに追い上げる。
 雪夫の楽しげな視線を感じ内腿が軽く痙攣する。
 『触って欲しい…雪夫に触れて欲しい』その思いだけで俺の思考回路は白く霞んでいき自分を扱く手が早まっていくのを禁じ得なかった。
「もう……い…いっちゃうっっ…」
 フルフルと頭を振り縋り付くように俺の前に立つ雪夫を見上げる。
 雪夫は綺麗なそれでいて妖艶な笑みを浮かべ俺を促すように頷いた。
「……あっ……ああっっ……ゆきっっっっ」
 突き抜けるような衝撃が腰から這い上がり、俺は耐えきれずぶるっと体を震わせて白い飛沫を迸らせた。


「良く出来ました。ご褒美上げなきゃね」
 くったりと脱力した俺の身体を雪夫が優しく抱き留め、酸素を求めて喘ぐ俺の唇をキスで覆った。霞む意識下で雪夫の猛りを腰に押しつけられると俺の浅ましい欲情は更に煽られる。
「綺麗だったよ…俺がもっと綺麗にして上げる」
 囁く雪夫に俺はしがみつく。
「好き…雪夫が好きだよ」
 切れ切れの俺の言葉に雪夫は満足げに微笑み、俺の身体を押し倒すとゆっくりと覆い被さって来た。